第二話 リアンと王様と魔導師再び

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 ルーデシアスは、ご冗談を、と肩を竦めた。 「忘れられればいいのだが、授けられた記憶力だけはどうにもならない」  一般に大地の末裔(ランダリア・ルース)は暢気だと揶揄(やゆ)される。  それには理由がある。生を受け死に至るまでの出来事が克明に刻まれる。悲しみも、別れも忘れる事が出来ない。ある意味残酷ともいえる能力だ。その反動が、ルーデシアスのような暢気さとして現れる。  全ては神々の都合だった。  ゴーレムを封じた大地の、有事の際のフェイルセーフ。  そのための民なのだ。  そんな神々の思惑は遠い過去の出来事となり、血は薄れ、一般の民のほとんどはそんな能力とは無縁だろう。だが王族ともなれば、その能力は未だ色濃く受け継がれている。ルーデシアスが王たる所以だった。 「ゴーレムの記憶(・・)は、代々王族の直系にのみ口頭で伝えられる。だから、書庫にギニアスが出入りしても無駄なんだ。ゴーレムの事を記述した文献なんて何処にもないからね」 「じゃ、なんで気が付いたのかしら?」 「それは、リアンが掘り起こしたからじゃないのか?」 「……バレないように『慎重』にやったんだけどなぁ……」 「慎重、ねぇ」     
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