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ルーデシアスはリアンから顔を背け、明後日を向いた。視線の先には国境を隔てる高い山々があった。
「あの山々の中で一つだけ変わった形をした『山』があってね。それが先月の初め、突然消えてなくなった」
「……目撃者がいたのね?」
ルーデシアスはそれを聞いて、あははと笑った。
「山一個削ったんだよ? どれだけの音が鳴り響いたか。その後に、文字通り山のように大きな物体が空を飛んでいった。こっちは目撃証言が多数あったね。まぁ酔っ払いの戯言だと言い切ったがね」
「うう……闇夜を選んだのに……」
「うん。闇夜だったんだけどね。数百年前と今じゃ、人間の数は比べものにならない。夜はもう星の光だけじゃないんだ。人が灯した光で、その物体ははっきりと見えたよ。本当、リアン──西の大陸神は大雑把だなぁ」
「ぐぬ……ルーデシアスも見たのね」
「まぁね」
「何でこないだ来たとき黙ってた?」
リアンの胸ぐらを掴む手に力が入った。
「僕は──この件は、リアンが『秘密裏』に事を進めたいと思っていた。そう考えた。だからギニアスにも黙っていた。空飛ぶ山なんてバカバカしいってね」
「……」
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