第三話 覚醒と暴走と

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「何が『秘密裏』だよ。各国の諜報員全員が『アレ』をリアンが掘り起こした事を知ってた。バレバレだったよ。しかもそこの森の湖まで空を飛ばして移動したって? そこまでしてどこ突きゃ『秘密裏』なんて言葉が出てくんだよ? 信じた俺がバカだった!」  ルーデシアスにも同じ事を言われていたリアンはキレた。 「あんなデカイものどうやって掘り起こすのよ! スコップで掘ってたら何年かかると思ってんのよっ!」 「何も手で掘れなんて言ってない! リアンの力使えば瞬時に転送出来たでしょう?」 「空間転移の事? あんたバカ? あれは空間ごと転移すんのよ? あんなバカデカイの転送したら、周囲の山が崩壊するでしょうが!」 「んな事細かい理屈、俺が知るか!」 「んじゃ口出すんな!」  両者の睨み合い罵り合いは終わらない。どっちも折れないからだ。  捨て置かれた村長は、もう一度深ーくため息を吐き出し、片手を挙げた。 「あーいいかな?」 「うるさいっ!」 「今取り込み中です!」  村長は首を竦めた。そのまま首が体に埋まりそうだった。が、ここで引き下がるわけにはいかない。聞きたい事が山ほどある上、ここは自分の家だ。妻に数年前に先立たれ、以来ずっと静かに暮らしてきた。いや、リアンがいるので、静かに(・・・)は絶対に無理だ。  ──問題の優先順位、間違ってると思うがなぁ。  そう思いつつ口には出さなかった。替わりに静かにこう言った。     
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