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キリアは何体もの残像を残し、それらを器用に避けた。
「無駄だ。俺には通じない。知っているだろう? 俺の力を」
「知った事か」
リアンは両手を突き出した。暴風が吹き荒れ、先ほどの爆発で燃えていた木々の火が消えた。ギニアスはその辺の石ころと一緒に吹き飛んだ。
その中でも一際大きい岩が、キリアに向かって吹っ飛んで来た。岩はキリアをすり抜け、次いでキリアの姿が歪み、掻き消えた。キリアはいつの間にかリアンの背後にいた。
「速く動けば良いと言うものではない」
リアンは振り向きざまに右手を水平に薙いだ。
──キンッ。
涼やかな金属音がした。
キリアの残像と共に空間に亀裂が入り、その延長上にあった木々が音もなく切断され倒れた。鋭利な刃物で斬られたような切断面だった。
その瞬間、リアンの背面にキリアがいた。
「こちらからも行くぞ」
キリアは短剣を構えた。
「我が内なる刃よ」
短剣から光がほとばしり、長剣を象った。
キリアは一瞬で間合いを詰め、リアンの無防備な背中を上段から斬りつけた。だが。リアンの実体は既にそこにいない。斬りつけられたリアンの幻影は、音もなく掻き消えた。消える瞬間ニタリと笑みを浮かべて。
「ちっ」
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