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第三話 覚醒と暴走と
1
村長の家では、怒号が飛び交っていた。
「遅い!」
リアンは怒っていた。とにかく怒っていた。
「一体どこで油売ってたのか、きちんと私が納得するように説明しなさい!」
対するキリアも負けていなかった。
「これでも予定より半日早く着いたんだ! 村長も助けたし! 文句を言われる筋合いはない!」
一触即発。両者はギリギリと睨み合った。
それを見ていた村長は、深く深くため息をついた。
ちらりと自分の右足を見る。大腿部に包帯がぐるぐる巻きにされていた。キリアが投げたナイフが刺さったからだ。
左足を見る。膝から下が木枠で固定されていた。ギニアスから逃げた際に、キリアに左足を掴まれ、その姿勢のまま最大速度で疾走され、散々振り回されたおかげで、股関節脱臼した上に骨折──つまりメタメタになっていた。リアンが癒しの術を施さなかったら切断の憂き目に遭っていたかも知れない。
村長はもう一度、深くため息をついた。
「大体、各国の動向を探って来たんなら状況くらい分かるでしょ?」
「その状況を作り出したのはリアンだ」
「わ、私が何をしたってのよ」
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