第四話 暴走、そしてその後

1/15
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/316ページ

第四話 暴走、そしてその後

1  湖の底で眠りについていた『ソレ』の目に光が宿った。禍々しい赤い光が暗い湖底を照らす。『ソレ』は横たわった姿勢から起き上がろうと腕を動かした。ゴゴン、と鈍い音がし、大量の気泡が湖面に昇っていった。  『ソレ』はゆっくりと上半身を起こし、上にある湖面を見上げた。拘束していた太いロープが次々と千切れ飛んだ。『ソレ』は、腕、腰、足を、それらの動作を思い出すようにゆっくりと動かし、ぎこちなく立ち上がった。湖底の泥が大量に巻き上げられ、湖面は時を置かず茶に染まった。  湖面の中央がゆっくりと盛り上がり、『ソレ』の頭部が現れた。昏く怪しく輝くその目には、自身の存在意義である破壊対象しか映っていない。  かつて神々が創りし最凶なるモノ。異形にして巨大、強大なモノ──ゴーレム。ソレは数百年の時を経て、再び大地に顕現した。  『(リアン)』を倒すために。 2 「ぐぐぅ……」  リアンの家の中では村長が(うごめ)いていた。リアンに家の中に吹っ飛ばされ、床に落っこちた衝撃で左肩を脱臼した。最早どうにもならなくなっていた。 「リ、リアン……」     
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!