2.沈む

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小学4年生にもなると社会性が必要だった。弱者は強者に合わせないと生きていけない。派閥に属せない子は浮いていく。 私は、どちらかというと社会性は欠如していた方だろう。人に合わせる事が苦痛で、ひどくストレスで、人と合わせて始めたものは何一つ長続きしなかった。本当にやりたいと思っていないものを、続ける器用さが私にはなかったのだ。 一緒に始めた子には適当に理由をつけて、辞めることを告げた。そんなことを何度も、何度も、何度も繰り返して、たくさんのことを途中で投げ出した。 手元に残ったものはほとんどなかった。 そんな私を当たり前だが周りはあまりよく思っていなかったのだろう、1度、モノを隠されたことがあった。 新しく買ってもらった色ペン。 休み時間に机に出したまま少し席を外すし、戻ってくるとそれは無くなっていた。 「私のペン、知らない?」 近くにいた同級生に聞いた。 「×××ちゃんが持ってったよ」 私は、×××見つけて、聞く。 「私のペン、どこやったの?」 ×××は「えー、知らなーい、みんなと違うことばっかりするから、神様が怒ったんじゃない?」と笑いながら言う。×××と普段一緒にいる何人かがクスクスと笑っているのが聞こえた。 嫌な雑音だ。 「ペン、どこ?」 「だから知らないってばー」 ×××はニヤニヤしながら自分の席に着く。 「返してよ」 ×××はニヤニヤ笑う。 悔しくて、悲しくて、でも涙は出なかった。 ペンは、結局見つからなくて、返してと言っても×××は変わらず笑うだけ。 ペンは返ってこなかった。
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