4.私の人生は、雨だ

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「本当にキレイですよ。」 「ね、似合ってるよ。」 美容師のおばさんたちは口々にそう言ってほめてくれた。 それがお世辞とわかっていても悪い気はしなくて、私はさっきまで沈んでいたのが嘘かのように笑ってお礼を言った。 撮影は滞りなく進んだ。 ポーズを指定されたり笑ってくださいなんて言われたりするのは、慣れなくてなんだか気恥ずかしかったけど、至れり尽くせり色々なことをしてもらってほめてもらって、女王様にでもなったような気持になった。お金を払っているからだとわかっていながら、とても気持ちのいい対応が私の心をだんだん柔らかくしてくれた。 雨で撮影を延期させようか迷ったけど、撮影場所の小さな中庭にも桜の木があって、桜の写真もしっかりとれたから今日を選んでよかったと思った。私の気持ちとは反対に、純粋でキレイな花を咲かせる桜の花も、だんだん私の気持ちを柔らかくしていった。
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