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その口は封じられました
今日も対象をこの世から消した。
世界には様々な文化があり、異なる価値観があるものの、その根底には人間の生命への尊厳が存在している。だからそれを蔑ろにする風習や主張は糾弾され吊るし上げられ、周りから石を投げられ、そして排除すべき悪を誅したとして皆がかちどきを上げるのだ。
だからこそ人の命を奪うことを生業としている僕もまた排除されるべき悪なのだろう。自分自身がそんな風に見られるであろうことは知っているし、今までしてきた行為を洗いざらい白状してどこかの裁判所に持ち込んだら、一体何回分の一生を過ごさなければいけないか考えるのも億劫になってくる。
ただ、対象の家を家族もろとも爆破する時も、相手の首に巻き付けたロープを絞め続けている時も、病院で対象が食すであろう病院食に毒を盛っている時も、僕の手によって世界中から貴ばれているものの一つが消え去っていることに、僕自身は何かしらの情が湧いたことはあったがそれで手が緩んだ記憶はない。そういうところを見出されて、僕は殺人鬼の道に引き込まれたのだから当然とも言えるかもしれないが。
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