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「お客様、ここはVIP専用フロアです。そして今は大切なお客様がお泊りです。勝手に入られては困ります」
目の前に彼女に言ったのだけど、それで察したのか、イヤフォンから『わかった』とマネージャーの声が聞こえて、心の中でホッとした。
「はあ? 何、同じこと言ってるの? だからそれは知ってるって言ってるでしょ?」
「えぇ、ですから別のお部屋にご案内を」
「しつこい! あたしはアレックスに会いに来たの! なんで別室に通されなきゃいけないのよ!」
ファースネーム? そうなるとビジネスじゃなくてもっと親しい間柄っこと?
「そうは言われましても、お客様のことをミスターから聞いておりませんので」
「うるさい! あたしはアレックスの婚約者よ!? こんなことして済むと思ってるの!?」
「──え?」
『婚約者』、その言葉に固まる私を目の前の彼女は「ふふん」と鼻を鳴らして笑った。
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