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突然、物が割れるような音がした。
たんすの上から壊れ物が落ちて割れた音、それを10倍位にした音が響く。
びくりと体が震えてそちらを見る。
すると中肉中背の男がこちらに吹っ飛んできたのが見えた。
ちらりと足が見えた気がする。恐らく誰かに蹴られたのだろう。
チンピラの喧嘩なのだろうか、そうだとして人間の体というのはあんなに簡単に吹っ飛ぶものだろうか。
吹っ飛んだ男を追って、二人の男がこちらに来る。
一人はスーツを着ていて、このすえた臭いがする場所に不釣合いに見える。
もう一人は、なんだろう。歩き方が変だ。関節がぎこちないというか動きがおかしい気がした。
あとは。横顔だがクマが酷い。
「おい、鍵はどこだ?」
スーツの男が聞く。クマの男は微動だにもしない。
「し、知らない!俺は何も知らないんだ!」
ガタガタと震えながら吹っ飛ばされた男が言う。痛みなのだろうか、恐怖なのだろうか、脂汗を流しているのが見えた。
「おい、ジョン。やれ。」
スーツの男はふうと大げさに溜息をつくとクマの男に言った。いかにも東洋人という見た目の男がジョンと呼ばれるのにはいささか違和感があったが、依然この近くに軍施設があった事を思い出した。
ジョンと呼ばれたクマのある男は頷くでもなく返事をするわけでもなくそのまま倒れこんだ男のもとへ向かう。
ほぼ四つんばいになりながら逃げる男に向かって蹴りを入れた。
ゴキィ
多分骨の折れる嫌な音がした思わず目を背ける。
どう考えてもいい状況じゃない。早く自分も何処かに行ったほうがいいんじゃないか?でもどこに行ったらいいのか分からない。
スーツの男がこちらを見た。
「オニーサン、カンコーキャクの人?」
ニヤリ、品定めをするようにこちらを見るのが分かった。
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