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「色街コッチじゃないね。アンナイしてアげるよ。」
外国人風の訛りがあるが、それがまるでわざとやっているような大仰さでたじろぐ。
ただ、ここで兄を探してますと言っても碌なことにならない事は分かっている。
「……ありがとうございます。よろしくお願いします。」
頭を下げるとニヤリとスーツの男はもう一度笑った。
◆
わざと遠まわりをされたりとかは無かったと思う。まもなく歓楽街らしき場所に着いた。
新宿のそれとは違って酷く薄暗い。
ネオンも何も無く、ただ呼び込みがあるだけだ。
ただ、スーツの男がその区画に入った瞬間客引きが一瞬静まり返った事だけは確かだ。
その後顔を見合わせて数人慌てたように店の中に入っていくのが見えた。
ぐるりと通りを見渡す、アーケード風の大通りが見えるがここもビル群の中なのだ大通りの上は別の部屋があるのだろう。
それに、明らかにここの人間じゃない。逆にいうと俺に近い様子の人間がぽつらぽつらといる。
ああ、これはいかにもカンコーキャクだと分かってしまう。
多分誰に何を聞いてもまともな返答は帰ってこないだろう。
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