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「えっと、ヤクザさんの中にキョンシーを使ってる人がいて。超こわいんですよ。すぐ殺し合い始めるし。」
キョンシー。
古い映画で聞いた事があるくらいで後はスマホ向けのゲームに出てくる、そんな言葉が普通に出てくることに少し驚く。
「キョンシーって死体を操るっていうあの?」
俺が聞くと「そうそう。あれがみんな死んでるって不思議よね。」とそれが当たり前のように返した。
女は嘘をついている様に見えなかった。
ベッドに座って足を伸ばして、指先をグーとパーにする動作を繰り返しながら「ヤクザさんの抗争の道具らしいよー。」と言った。
このビル群にはいくつかのマフィアの組がある。それはネットで調べればすぐ分かる事だった。
それが事実かどうかは知らないが“死体”を使って戦っている。
それが、比喩なのかどうかはこの娘の話では良くわからない。
良く分かってない事を無理やり説明しているようで要領の得ない話が次々に出てきてしまうのだ。
けれど、“死んだ”人間がマフィアの部下として動いている。それが戸籍上死んだ事にされたのか実際死んだのかは知らないが要はそういうことだろう。
もしかしたら自分が探しているのはその死んでいる人間のうちの誰かなのかも知れない。
あまりにも漠然としているけれど、つじつまは合う。
それでも、他に手がかり等何も無いのだ。
「キョンシーを見ることができる場所って何処か知ってる?」
女に聞くと「えっと、ボディガード用の市場が第二階層との境にあるよ。」と答えた。
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