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後ろをきちんと見ていなかったのだろう。人にぶつかってしまう。
先ほど大立ち回りをしていた男たちによく似たスーツの男だった。
「済みません。」
謝ると、スーツの男はこちらをちらりと見てそれから「この辺の商品はマフィア用だ。お楽しみ用はあっち。」と女性の死体が多くいる区画を指差した。
女性達の死体が並んでいる横にある死体に目が行く。
ライトアップもされずに置いてあるそれこそが、探していた兄だった。
無言でその遺体に近づく。
兄の鎖骨にあったほくろが見える。間違いなくこれは自分の兄だったものだと確信する。
何故ここに遺体があるのか、何故キョンシーだかとして兄が売られているのか疑問はあるが目の前にいるのが兄だということだけは確かだった。
マフィアの支配する島で兄の遺体が売られている。
普通に生活していたらありえない事実に頭がガンガンする。
ちらりと見値札には百数十万ほどの数字。
値札の端には走り書きで戦闘用と書いてあった。
ほとんどのクレジットカードは安全のため置いてきてしまっている。
とてもじゃないが現金で払える金額じゃない。
大切な家族だった。金が出せないからという理由で兄の遺体を見捨てるのかと悩む。
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