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 橋本先輩は月城高校の三年生で、男子バスケ部に所属している。  上京(かみぎょう)ミツキは、橋本先輩に恋をしている。 *  初めて橋本先輩を見たのは、女子バスケ部との合同練習だった。 中学時代はバスケ部に入っていたが、高校ではあまりやる気がおきず、入学してからは積極的に帰宅部に入っていた。  高校生活も三ケ月ほどが過ぎ、「やっぱり帰宅部も退屈だな」と思っていた矢先、クラスメイトである中村サチに誘われて、部活の見学に行くことになった。  サチは中学からの同級生で、彼女も中学時代はバスケ部だった。見た目は悪くないけど、背は高く、短髪で、こんがり日焼けしているためか、色気はあまりなくて、性格も男っぽい。男女の友情とか、余裕で成立しそうな感じだ。  そもそも、見学に行くことになったのは、「男子バスケ部の三年生に橋本先輩っていう凄くカッコイイ人がいて、是非とも拝みに行きたいから、ミツキも一緒に来てよ!」という、なんとも安直な理由だった。   今日は女子バスケ部との合同練習だから、バッチリお顔を拝めるということらしい。 「拝むって、仏かよ」とかいう突っ込みを、心の中でしていたことはサチには内緒だ。  橋本先輩というカッコイイ人がいるという噂は、一年生まで浸透していた。 気になってはいたけれど、わざわざ3年生エリアまで行くのは不自然だし、同じ学年でもないため、接点もない。しかし、部活見学という理由なら、とても自然だし、変に怪しまれることもない。  タダで拝めるのなら、拝んでみたい。そして、そのご利益にあやかりたい。  これが全ての始まりだった。
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