私であることの 存在証明

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六月・雨上がり・鮮やかな空の色が眩しい 街並みや木々はもう夏色としてもよいけれど・空気はまだちょっと足りなく感じる 「冷たぁっ!」 振り向くと 思い切りの水しぶきがあがっている・太陽を背にして ホースで水まきをしている 「まだプール掃除 終わっていないでしょ・ちゃんとやってよね」 「気持ちいいだろ・早く泳ぎたいよな」 水しぶきの向こうに 虹色が見えた/ たくさんの色のひとつなんだな と思う あなたの存在が 私の眼の中の虹彩に囲まれた瞳によって屈折反射されるときに・私の瞳がプリズムの役割になって あなたが分解されて・存在が並んだ想いのように感じられる バスケットボール 春季西東京都大会・準決勝戦/ 残り1秒 シュートが外れて・静かに琥珀色のボールが弾む/ 私は・そのボールの横を見ていた 笑顔とも泣き顔とも・やり切った顔とも・悔しい顔とも違う 私の瞳のそれぞれの瞬きは いろいろなあなたを反射しているけれど・1回の瞬きからは そのうちの一瞬の存在のみが見ている私の脳みそに届く 高い角度のあなたからは赤に近い想いが・低い角度にあるあなたからは紫に近い想いが・私の脳みそに届く たくさんのあなたから【あなた-プリズムとなる瞳-私の脳みそ】のなす角度によって・違ったあなたの存在が スペクトルに並んだ想いに感じられる
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