あなたがいることの 存在確認

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十二月・トウキョウ地方に雪が降った 前日の夕方から降り始めた雪は 登校時にはもう止んでいたが・いつもは鮮やかな町並みの多くを 雪の白が埋めつくしている 南多摩高等学校の規則では・自転車通学は自宅からのみが許可され・最寄の多摩中央駅からは バスか徒歩となる といっても・歩けない距離ではないので 徒歩が生徒のほとんどを占める/ バスは時間が読みにくいし 混んでるのはいやだし・女子としては苦手な乗り物になる 是政大橋を渡る/ 多摩川の川原も・ほとんど白で埋め尽くされている 降った雪でトウキョウのスモッグが洗い流されたのか・空気がいつもより澄んでいる 「おはよう」 後ろのちょっと離れたところから・声が聞こえる/ 自転車のブレーキ音はしない 声だけで・それが自分に向けられたものなのか 分からないので・振り向かない でも 分かってしまう 声は覚えているし・週に数回かだけれども 日常の風景になりつつあったからだ もちろん・電車を選んで 決まった時刻を意識して 駅からの道も変えずに歩くようにしているコトは・私の秘密事項になる 今朝は雪だったので・遅刻は厳禁だから電車を2つ分早めに乗ったし この雪で自転車通学はないだろうと思っていたから・少しびくっとした 「今日は 校庭使えねえよなぁ」 いつもの自転車を・今日は押しながら私の左横を歩いている 視線を向けて確認してから・返事をする 「やっぱ・こんな日でも自転車なんだ」 「行けるかなって思ったんたけどさ・実際滑るとブレーキやばかった」 「こんなとこでケガなんかしないでよ・もうすぐ試合でしょ」 「今日金曜かぁ・体育館使えないかな」 いつものように・どうとでもよい会話を心がける 一緒に歩く/ 高校まで・あと10分ちょっとの時間
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