第1章 カップラーメンの3分

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「鈴子先生、今日もカップラーメンですか?」 「キョウタロウ先生」 鈴子の職場は予備校だ。鈴子は英語の講師で、キョウタロウ先生は国語の講師だ。 このキョウタロウ先生、漢字で書くと「今日太郎」と書く。フルネームは、山田今日太郎。とても変わった名前の上、予備校内に山田先生があと2人いるため、同僚も生徒も皆「今日太郎先生」と呼んでいた。鈴子も「斎藤」というありふれた名字なので「鈴子先生」と呼ばれている。 「今日も不思議な柄のスーツですね。一体どこで仕立ててらっしゃるんですか?」 「秘密です」 今日太郎先生は「イケメン台無し男」というあだ名がついていた。まだ28歳と若い上、顔もいいしスタイルもいいのに、名前は変だし(読者に今日太郎さんいたらごめんなさい)、スーツの柄も髪型もいつも変だ。今日は巻き寿司のイラストが並んだ柄のスーツを着ている。ネクタイの柄もスーツと同じだ。髪型は肩まで伸ばしてパーマをかけていた。発言も可笑しくて、授業でも「いつやるの、今日でしょ!」とかあの先生の決め台詞を恥ずかしげもなくパクって使っている。生徒からの人気は抜群だ。 「前から思ってたんですが、鈴子先生ってかなりのお嬢様なんですよね?なんでカップラーメンばかりなんです?」 鈴子はきょとんとした。 「えっ、それは、美味しいからですよ!」 「ははは、たしかに、美味しいですよね。」
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