第1章 カップラーメンの3分

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今日太郎先生が言ったとおり、鈴子は生粋のお嬢様である。見た目もわかりやすいお嬢様ファッションで髪型も黒髪のロングヘアーだ。カップラーメンを食べる姿は見た目と全く合っていなかった。実は、鈴子が初めてカップラーメンを食べたのは半年前のことだった。幼稚舎から大学まで私立のお嬢様学校で過ごし、この学習塾に就職した今年の春、ここの自販機で初めてカップラーメンを食べたのだ。存在は映画などで見て知っていたものの、食べる機会はなかった。というか鈴子は店屋のラーメンすら食べたことがなかった。好奇心で食べてみたら、美味しさに感動し、それ以来昼食はカップラーメンばかり食べていた。 「だけど、カップラーメンなんていつでも食べられるのに毎日って飽きません?」 「ええ?いつでもなんて、こんなものここ以外でそんなに食べられるんですか!?」 鈴子は驚いた。 「はははは。鈴子先生、コンビニとか行かないんですか?」 「コンビニは、法外な値段で物を売っているから行かないようにと母が・・・」 今日太郎先生はますます笑い出した。 「お金持ちほどちまちま無駄遣いしないってのは本当なんですねえ。たしかにコンビニは高いですし、お母様は賢明ですよ。」 今日太郎先生がこう言うってことは、コンビニにはカップラーメンがあるのかしら。自販機よりやっぱり高いのかしら。 考えていたらタイマーが鳴った。 「鈴子先生は面白いですね。」 まあ、今日太郎先生に言われるなんて。そんなに変なこと言ったかしら。 「それじゃ」 今日太郎先生が出ていこうとした。 「あ、今日太郎先生」 鈴子は今日太郎先生を呼び止めた。 「ありがとうございました。」 今日太郎先生はきょとんとした。 「へ?礼を言われるようなこと、しました?」 「私、いつもカップラーメン食べるの待ちきれなくて、3分待てたことなかったんです。だけど今日は今日太郎先生のおかげで待てました。」 今日太郎先生はまた笑った。 「お役に立てて良かった。伸びちゃうから早く食べてください。」 「はい」 今日太郎先生は社食から出ていった。   鈴子はわくわくしながら蓋をめくった。 「それにしても、さっき今日太郎先生が言った、伸びるってなにかしら?何が伸びるのかしら・・・」 鈴子は不思議に思いながら麺をすする。 「うん、やっぱりちゃんと待ったからかいつもより美味しい気がするわ。」
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