押しに弱いゆづき君

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「もう……いいよ笑。前は、名前で呼んでたもんな。小学生の頃だったか?」 「あ、うん!。あの時は楽しかったですねー!」 夕焼けの中、大盛況だった女装コンテストは終わり、俺と橘は自分達が住むマンションに向かっていた。 二人は家が隣で幼馴染みなのだ。 「ねぇ、結局、表彰式なくなっちゃいましたけど、優勝って狙っていたんですか?」 「え?」 予想外の質問…。改めて考えるとやる気はあったものの優勝うんぬんは全く考えていなかった。じゃあ、なんのために女装までしたんだろうか…? 「あ、うん。一応やる気はあったよ。優勝もまぁ…少しは…笑。」 苦笑いで誤魔化すように言う俺を見て橘は「ふ~ん」と。ニヤニヤ笑いながら俺の顔を覗きこんだ。 「じゃあ、私が表彰しましょうか?」 ちょうど差し掛かった坂をタタッと走ると橘は大きく手を広げ後ろの夕焼けを背負うように、いつも以上の優しい笑顔を見せた。 「へ?」 「では、いきます!オッホン。」 「いや、ちょっと待っ…」 「え~。ゆづき君は文化祭女装コンテストにてとっても!よく頑張りました!。なのでお褒めの言葉を送ります!!」 お褒めの言葉…笑。 ってか、名字じゃなくて名前を呼んでほしいんだけd……。     
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