同じ目線で

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 「神様に頼み込んで用意したプレゼント、あの子に受け取ってもらえなかったんだって?」  部屋で落ち込んでいるルカを、友人のロンが心配して訪ねてきてくれた。あの日以来、ルカは仕事の時間以外はずっと部屋に引きこもっていた。  「そんなに落ち込むなよ。理由を聞いて、納得できたんだろ?」 「……できたよ。僕がしようとしたことは、ただ彼女の傷を抉ることだったのかもしれない」  ルカはあの時のことを思い出しては落ち込んでいた。  自分は、マリーの気持ちをちっともわかっていなかった。彼女がいつもあの本を読んでいるのは、両親との思い出に浸るためだったのに。  本を読みながら見ている世界は、初めて本を読み聞かせてもらった時の両親との記憶で、本の中の世界ではなかったのだ。  「……あの子が好きだと言った物語の世界へあの子を連れて行こうと思ったことは、君の優しさだと思うよ。何故その物語が好きなのか、その理由は人によって様々だから、今回気が付けなかったことも仕方のないことだ。人の感情は複雑だからね」 「仕方がない、で済むのかな……それでも、僕が彼女を泣かせてしまったことには変わりないんだし」     
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