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「そこが、君の優しすぎるところだよな」
ロンは穏やかな声で言った。
「ルカ、君はこの十五年の間、ずっと彼女を見てきて、その間に少し、人間に近付いていたかもしれない。でも、俺達は天使なんだ。種族が違う。寿命が違う。もちろん、考え方だって違う。今回だって、人間には到底叶えようのないことを、君は神様に頼み込んで実現させようとした。それだけで十分なんじゃないのかな。それが、君があの子のことを思っているってことなんだと、俺は思うよ」
「……そうかな」
そう答えながら、ルカは頭の中でロンの言葉を繰り返していた。
人間には到底叶えようのないことを……。
「天使では、彼女にしてあげられないこと……」
「何だって?」
「もしかして、僕が人間なら……」
「おいおい……人間になりたいのか? 神様だって、そう何度もわがままは聞いてくれないぞ?」
ロンは心底呆れた様子で言ったが、ルカは首を振った。
「分けてもらった力は、マリーに断られてしまったからまだ使っていないんだ。もしかしたら……」
言いながら、ルカは立ち上がって身支度を整え始めた。
そして最後にロンを振り返ると、自信なさげに笑った。
「馬鹿馬鹿しいことをしてると思うだろ?」
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