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翌日は良く晴れた。陽射しも前日と同様に暖かい。
昼過ぎにいつも通りルカは教会に向かい、先にベンチに腰掛けるマリーに駆け寄った。
「マリー、こんにちは」
「こんにちは、ルカ。じゃあ、はい。きっと今日で読み終わるわね」
ルカは開かれた本を受け取って、昨日の続きから読み始めた。
しばらくの間、沈黙が流れた。風の音や、鳥の声だけが聞こえる世界に、時折ルカがページをめくる、紙の擦れる音が混じる。
やがて、ルカはぱたんと本を閉じた。
「ありがとう。すごく面白い本だったよ」
そう言うと、マリーは嬉しそうに微笑んだ。
「ねえ、ルカはどの物語が一番好き?」
「一番?」
ルカはしばらく考えてから、答えを出した。
「一番最初の物語かな。ほら、男の子と女の子が魔法の世界を旅する物語」
「……私も、その物語が一番好きだな。気持ちがワクワクする」
マリーはますます嬉しそうに笑った。けれども、すぐにその笑顔は消えてしまった。
「読み終えた、ってことは、もうルカは本を読みに来ることはないのね……」
その声を聞いて、ルカの胸は痛んだ。
「……もし、良かったら。また時々会いに来るよ。今までのように頻繁にとはいかないかもしれないけど」
「絶対に? 約束してくれる?」
そう言ってマリーが差し出した右手の小指に、ルカも小指を絡ませた。
「ああ。約束するよ」
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