同じ目線で

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 その冬、初めての雪が降った日の夜のことだった。  ルカは教会に向かうと、いつものベンチではなく、併設された宿舎の二階の角の部屋に近付いて、コンコン、と窓を叩いた。  しばらくすると、閉じたカーテンがちらりと開いて、中からマリーが顔を出す。窓の外に居るのがルカだとわかると、マリーは慌てて鍵を開けてくれた。  「ルカ! どうしたのこんな時間に。もう一月以上来ていなかったから、もう会えないかと……思って……」  早口で話していたマリーの言葉は、後半には段々とゆっくりになり、やがて途切れた。  「ルカ……ここは二階よ。あなた、どこに立ってるの?」 「立ってるんじゃないよ。浮いてるんだ」  ルカは正直にそう答えた。  マリーは驚いた顔をしたが、ルカの背中に真っ白い翼があるのを見て、小さく頷いた。  「……ルカ。あなた、天使だったのね」 「黙っていてごめんね、マリー」  ルカがそう言うと、マリーは首を振った。     
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