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空に向かって水が吹き上げた。どこからだろうと思った時には水柱が上空の二体の魔獣に直撃して喧嘩が始まった。すぐに水柱は消え、大きな衝突音に野次馬が増える。
「おい、何だこの音は!」
「喧嘩してるの」
畑のおじさんに煮られてしまわないようママの店に隠した本を担いで、キンペイが駆けあがって来る。
「派手に始まったなぁ。ヤマト! 急いで町に行くぞ」
「町に何しに行くの?」
「商売だよ!」
「急に?」
「行けば分かるから急げ! 場所取りが肝心なんだからな!」
リンとドンに声を掛けてキンペイの後を追う。
町はお祭り騒ぎだ。
「なんのお祭り?」
「喧嘩祭りさ!」
頭から酒を浴びる通りすがりのドワーフが答える。
怪しい色をした薬の露店、串物屋に瓶詰めのお菓子のお店も。敷物を持って広場に走る獣人や精霊と人間。そんな僕たちの頭上では魔獣の喧嘩が激しさを増す。
「やれやれ!」
「お前さんどっちにする?」
「儂はもちろん青いのに賭けるぞ!」
こんな活気のある町を見たのは初めてだ。こんなに人がいた事にも驚きだ。
「走れ、ヤマト! こっちだ!」
「あ、うん!」
僕たちは自然精霊三人が踊りを披露する広場の入り口辺りに場所を取った。すでに中は店と観客で溢れている。
「ママたちもいるのかな?」
「店の前でやってんじゃないか? ほら、敷物広げてくれ。こういう時にしっかり稼がないとな」
「喧嘩で祭りが始まるとは思わなかったよ」
「みんな変化を待ってんだよ。こういう、いつもと違う事が楽しいんだろ」
「キンペイも?」
「俺は商売繁盛が一番だ。お前も食費を稼げよ!」
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