第一章

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 うちの神社の祭神は元・邪神、現・縁結びの神(自称)。  ひょんなことから復活させちゃったあたしは、紆余曲折の末、こいつの嫁になってしまった。  やっぱやめとくんだった、と思うことが時々ある。  今現在まさにその真っ最中だ。  ☆ 「ちょっとどきなさい」  あたしは蛇神を睨みつけた。  本来の姿で巻きついてきてる。  九つの頭を持つ大蛇が、JK絞め殺す寸前って絵面。どこのB級ホラー映画だ。  ていうか、部屋ぎっちぎちで狭い。山より大きい父親を持つ奴が、一部屋に入るとか無茶だっつーの。  八岐大蛇の息子は世にも情けない声出した。 「寒いんだよ」 「暖房ついてんでしょうが。自分の部屋でコタツにもぐってろ」 「お嫁さんにくっついてれば、心もあったまると思うんだよな」  ドヤ顔で言う神様の脳天に容赦なくチョップくらわしておいた。  人間の姿になって、床でピクピクする九郎。あー、これで広くなった。  それ以前に、目の前に大蛇の頭が九個あっても驚かなくなった自分の慣れを心配したほうがいいかもしれない。 「いい攻撃……さすが東子。あのさぁ、俺、蛇の性質持ってるから寒さ苦手なんだよ」 「あんた仮にも神様でしょ。神通力で周囲の温度操作できないの」 「できるけど。嫁に甘えたい」 「それで虐殺シーン一歩手前みたいな衝撃映像作り出すな」  普通の女子なら悲鳴あげて逃げるわ。 「ちぇ。あ、気を取り直して新婚旅行の計画立てないか?」 「絶対立てない」 「高級リゾート化しきってプライベートビーチで夕焼け見て、豪華客船で世界一周、豪華ディナー、高級ブティックで買い物と着せ替え楽しんで、薔薇の花園でデートして、ロマンチックな星空の下で手つないでー」 「絶対行かない」  乙女な妄想はばっさり切り捨てよう。 「あんたの愛読書はロマンス小説か」 「お気にの作家は二人いるよ。二人とも異世界行ってるけど。結婚相談所やってるほうはたまに帰ってくるんで、この前サインもらってきた。旦那の魔王が恐かった。小学校の先生のほうは行きっぱかなぁ。あっちの天使な王子はかなり独占欲強そうだから」  何言ってんだこいつ? 「ところでプラン気に入らないのか? お披露目かねて高天原一周ツアーにする?」 「行かないっつってんの。……あ、リゾートって言えば、これ。あんた噛んでるでしょ」  スマホの画面を見せる。町内に近々オープンの温泉施設だ。
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