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第二章
外出れば分かるっていうから、コート着て出てみた。
ら。
なんかすごいロマンチックなイルミネーション空間がそこに!
思わず祭神様どついた。
「アホか?! この罰当たりっ!」
「本人がやってんだから平気平気。キリスト教の教会はやってて、神道の神社はダメってのはおかしくないか」
「よそはよそ、うちはうち! 神社や寺ではやらないのっ!」
電飾でキラキラな神社がどこにある?!
「ほほう、俺が第一人者ってことだな」
「何なのその底抜けのプラス思考。そんな世界一目指すな」
「大丈夫だって。クリスマスっぽいのはないし、ちゃんと和風にしてある。テーマどうしようかと迷ってさー、一番よく知ってる八岐大蛇退治にしようとしたら、スサノオに止められた」
「あんた息子だよね?!」
トラウマとかないの?! 自虐? 自虐と取っていいのか。
ていうか、止めてくれてありがとうございます須佐之男命。持つべきものは友ですね。
「あっはっは、冗談だよ。普通に和風のテイストで高級感ある感じに仕上げてある。夜に綺麗な場所でデートって鉄板だろ。しかも縁結びの神社」
「あんたついこの間まで悪神扱いだったじゃ……うん、もういい。好きにして」
ご本人が嬉々としてやってんだから勝手にしてくれ。
少なくとも悪者扱いされてないんだからもういいや。
「ーーーこんばんは」
ふいに落ち着いた男性の声がした。
え、誰?
九郎を訪ねて来るなら須佐之男命がいつもだけど、声違う。
振り向けば、年齢不詳の青年二人と小学生くらいの少女がいた。
青年の一人は穏やかで何とも言えない不思議な雰囲気をまとい、もう一人は眼鏡クール系。いずれも美形。
少女は純粋であどけない美少女。
「―――あれ?」
あたしは目を細めてよく見た。生まれつき、人ならざるものの正体を見破れる力があってね。スタンドみたいに傍に見えるんだけど。
……これは何だろう?
力の強い神相手だと見破れないことはある。でもこれは、何ていうか……。
「どうした、東子?」
「え……と、妙な感じ。すごくぼんやりとしててはっきり見えないだけじゃない。かなり強い神の力が働いてるのは分かるよ。でも、これ、本人じゃないっていうか……何て言えばいいかな、残り香?みたいな……」
「へえ。これは本物だな」
面白そうに言ったのは、最初の青年のほうだった。
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