第二章

1/6
前へ
/10ページ
次へ

第二章

 外出れば分かるっていうから、コート着て出てみた。  ら。  なんかすごいロマンチックなイルミネーション空間がそこに!  思わず祭神様どついた。 「アホか?! この罰当たりっ!」 「本人がやってんだから平気平気。キリスト教の教会はやってて、神道の神社はダメってのはおかしくないか」 「よそはよそ、うちはうち! 神社や寺ではやらないのっ!」  電飾でキラキラな神社がどこにある?! 「ほほう、俺が第一人者ってことだな」 「何なのその底抜けのプラス思考。そんな世界一目指すな」 「大丈夫だって。クリスマスっぽいのはないし、ちゃんと和風にしてある。テーマどうしようかと迷ってさー、一番よく知ってる八岐大蛇退治にしようとしたら、スサノオに止められた」 「あんた息子だよね?!」  トラウマとかないの?! 自虐? 自虐と取っていいのか。  ていうか、止めてくれてありがとうございます須佐之男命。持つべきものは友ですね。 「あっはっは、冗談だよ。普通に和風のテイストで高級感ある感じに仕上げてある。夜に綺麗な場所でデートって鉄板だろ。しかも縁結びの神社」 「あんたついこの間まで悪神扱いだったじゃ……うん、もういい。好きにして」  ご本人が嬉々としてやってんだから勝手にしてくれ。  少なくとも悪者扱いされてないんだからもういいや。 「ーーーこんばんは」  ふいに落ち着いた男性の声がした。  え、誰?  九郎を訪ねて来るなら須佐之男命がいつもだけど、声違う。  振り向けば、年齢不詳の青年二人と小学生くらいの少女がいた。  青年の一人は穏やかで何とも言えない不思議な雰囲気をまとい、もう一人は眼鏡クール系。いずれも美形。  少女は純粋であどけない美少女。 「―――あれ?」  あたしは目を細めてよく見た。生まれつき、人ならざるものの正体を見破れる力があってね。スタンドみたいに傍に見えるんだけど。  ……これは何だろう?  力の強い神相手だと見破れないことはある。でもこれは、何ていうか……。 「どうした、東子?」 「え……と、妙な感じ。すごくぼんやりとしててはっきり見えないだけじゃない。かなり強い神の力が働いてるのは分かるよ。でも、これ、本人じゃないっていうか……何て言えばいいかな、残り香?みたいな……」 「へえ。これは本物だな」  面白そうに言ったのは、最初の青年のほうだった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加