第二章

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「小さい頃から色々見えるし、狙われたりしたもんでね。知識ないと身を守れないから、国内外の神話伝説は一通り読んだのよ」  切迫した事情がね。  比良坂翠生さんはうなずいた。 「ご存じなら話は早いです。テテュスを神でなく人間と結婚させたのは神々ですが、その理由は?」 「それは彼女の宿命が『彼女が産む子供は父親より強くなる』だったから」  強い神との間に子が生まれ、戦争仕掛けてきた場合、下手すれば世界は一からやり直し。  しかしテテュス本人は優しく人気者で何の罪もないので、結婚相手を斡旋しよう→父親が人間ならいーんじゃない?父親を超える子が生まれても人間レベルだしー……ってわけ。  九郎が「あ」と息をのんだ。 「まさか、東子もそうだということか」 「ん? 何が?」 「ええ。加賀地東子さん、貴女はが産む子供は父親を超えるという宿命を持っているんですよ」  あたしは思わず口を開けたまま固まってしまった。  ……ナンデストー?Σ(`゜Д゜´//)ななななな、な二ッ!? エェエェエェエェエェエェエェエェエェエェエ(゚Д゚ノ)ノエェエェエェエェエェエェエェエライコッチャ  九郎がイケメンな顔を歪めた。 「―――チッ。高天原の石頭どもが騒ぎ出すな」  うわ、舌打ちしたよ。 「ご心配なく。すでにイザナキノミコトに相談済みです。そんな宿命を持っている女性を放っておくことはできません。護衛をつけておくべきだと、正式に貴方宛に辞令が出ています」  比良坂翠生さんは封筒を差し出した。九郎は比良坂士朗さんを見やって、 「よく許可したな」 「お前は確かに八岐大蛇の息子だが、悪神でないことは皆知ってる。けっこう有名なんだぞ。何しろ長年幽閉されてたもんな」 「うれしくない有名理由だな。で、東子が狙われたのはそのせいか」 「どういうわけだか、本人すら知らない宿命を知ったらしいな。それ以降襲撃がないのは、須佐之男命が護衛を強化したからだろう。お前が復活してからはお前が守ってるし。この二人を敵に回すアホはそういない」 「ですが、油断はできません。また狙われる危険はあります。大人になるまで待ってたのかもしれませんしね」  ゾッとした。寒気がする。  身を震わせたら、九郎が何考えてるのか(分かるのが嫌だ)両手伸ばしてきた。 「待て」  ビシッと手のひら向けて一言。 「ハイ」  大人しく従う蛇神様(注:八岐大蛇の息子)。
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