第二章

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「……犬?」 「蛇なのに忠犬ですか」 「主人と下僕かな」  ひどいこと言われてる気が。 「違いますって!」 「東子の命令もとい我がままなら、何でも聞くけど俺」 「コラ。尻尾出して巻きつけてくるな。あたしにはバッチリ視えてんのよ」  ホラー映画再び。ほら、桃ちゃんがビビってお兄さんの後ろに隠れた。 「蛇の性質として、気に入ったものには巻きつきたくなるんだよ」 「これだけ執着してて戦闘能力も高い奴が番犬なら平気だな」  もしもーし。当人の意見聞いてくれませんかー。 「ああ、『父親を超える子』が生まれても戦争なんか起こさないっつっとけ。興味もない。そんなアホは親父だけでたくさんだ。俺はのんびり静かに暮らしたい。つーかやっと嫁見つけたんだ、結婚生活満喫させろ」  色々つっこみたい。  まずは止めるか、尻尾切ったら剣出て来るかな、と握ったままの尻尾を見やる。  ……ところで昔から疑問に思ってたことがある。テテュスの夫がどうして神じゃ駄目だったのか。強い神が生まれても、争いを好まぬ穏やかな気質だったかもしれない。だけどわずかでも危険性があるならと人間しか認めなかった。  一方で、現代日本の神々は、九郎を認めた。それは信頼してるからかもしれない。  邪神と言われ、人に迫害された孤独な神様。やっとそれから解放されたのか。 「―――って、待とうか。なんであたしがあんたの子を生む大前提になってんの」 「え? だってそりゃ東子は俺の嫁だから」 「……………………」  顔色が青になってきた。  赤じゃないよー。青だよー。ここテストに出ます。  大嫌いな虫やっつけてくれる交換条件みたいな感じで、今の今まで『嫁』ってのがどういうことか本当には理解してなかった馬鹿がここに。  詰んだ。←正直な感想 「東子? おーい、どうした」 「どうやら夫婦ということをきちんと理解してなかったようですね。まぁ高校生なら仕方ないですが」 「うん……そこまで考えてなかった……」 「ああ、なるほど。でも東子が嫁になるって言ったんだしな。それに俺ならどんな敵からも守れるぞ」  背後の九つの蛇の頭がいい笑顔してるなー。蛇って笑うの?って感じだけど。「ククククク」って副音声聞こえるけど。敵は丸呑みしてやるって顔に書いてある。ほんとに邪神に見えるぞ。 「……はぁ」  ため息ついた。
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