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「……犬?」
「蛇なのに忠犬ですか」
「主人と下僕かな」
ひどいこと言われてる気が。
「違いますって!」
「東子の命令もとい我がままなら、何でも聞くけど俺」
「コラ。尻尾出して巻きつけてくるな。あたしにはバッチリ視えてんのよ」
ホラー映画再び。ほら、桃ちゃんがビビってお兄さんの後ろに隠れた。
「蛇の性質として、気に入ったものには巻きつきたくなるんだよ」
「これだけ執着してて戦闘能力も高い奴が番犬なら平気だな」
もしもーし。当人の意見聞いてくれませんかー。
「ああ、『父親を超える子』が生まれても戦争なんか起こさないっつっとけ。興味もない。そんなアホは親父だけでたくさんだ。俺はのんびり静かに暮らしたい。つーかやっと嫁見つけたんだ、結婚生活満喫させろ」
色々つっこみたい。
まずは止めるか、尻尾切ったら剣出て来るかな、と握ったままの尻尾を見やる。
……ところで昔から疑問に思ってたことがある。テテュスの夫がどうして神じゃ駄目だったのか。強い神が生まれても、争いを好まぬ穏やかな気質だったかもしれない。だけどわずかでも危険性があるならと人間しか認めなかった。
一方で、現代日本の神々は、九郎を認めた。それは信頼してるからかもしれない。
邪神と言われ、人に迫害された孤独な神様。やっとそれから解放されたのか。
「―――って、待とうか。なんであたしがあんたの子を生む大前提になってんの」
「え? だってそりゃ東子は俺の嫁だから」
「……………………」
顔色が青になってきた。
赤じゃないよー。青だよー。ここテストに出ます。
大嫌いな虫やっつけてくれる交換条件みたいな感じで、今の今まで『嫁』ってのがどういうことか本当には理解してなかった馬鹿がここに。
詰んだ。←正直な感想
「東子? おーい、どうした」
「どうやら夫婦ということをきちんと理解してなかったようですね。まぁ高校生なら仕方ないですが」
「うん……そこまで考えてなかった……」
「ああ、なるほど。でも東子が嫁になるって言ったんだしな。それに俺ならどんな敵からも守れるぞ」
背後の九つの蛇の頭がいい笑顔してるなー。蛇って笑うの?って感じだけど。「ククククク」って副音声聞こえるけど。敵は丸呑みしてやるって顔に書いてある。ほんとに邪神に見えるぞ。
「……はぁ」
ため息ついた。
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