お白さま

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お白さま

自転車を走らせる私の背中は、スピードを出して漕ぐことによって発する熱に反してどんどん冷たくなって行く。  まさか、こんなことになるなんて、思いもしなかった。冷たく硬くどんどん私の背中にのしかかってくるそれは、かつての温もりを忘れた。 「あんれ、相変わらず仲がいいねえ。美香ちゃんと千夏ちゃんはぁ。」 近所のおばあちゃんに声を掛けられた時には、心臓が跳ねあがった。大丈夫、バレてはないはず。おばあちゃんは耳も遠いけど、目も悪いのだ。私は愛想笑いを残し、自転車を真紀ちゃんの家まで走らせた。  急がなければいけない。さもなくば・・・。  ことの始まりは、千夏が私に着いてくると言って聞かなかったことからだった。うちは物心ついたころから父親はおらず、いわゆる母子家庭だった。母は昼夜働き、必然的に私と5つ年が離れている妹の世話は、私の肩にかかってくる。私もまだ小学6年生であり、友達と遊びたい盛りである。遊びに誘われても、必ず妹の千夏がついてくるから、私は自然と誘われなくなってしまった。     
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