さんりんぼう 2

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声をかけずにまたバスに乗って桃山台の駅へ戻った。喫煙所で煙草に火を点けた。ケラケラと笑ってた子供の声が耳に残ってる・・・。 「羨ましいことないわ・・・」 独り言が出てしもた。いや、羨ましいんや、私、たまらなく深雪が羨ましい。あそこで大倉と大倉のオカンと一緒に子供を抱いてるのが自分やったらどんなに幸せやろう!って心底、思てる・・・。 ツツツって一筋流れた涙を見て、知らんオッサンが 「姉ちゃん、キツい煙草はアカンで、  沁みるで」 横から言うてくる。 放っておいてと言いかけて 「ホンマやな、そろそろ弱いのにして  禁煙せな、アカンわ」 お愛想言うた。 忠告は聴くもんやな、タニヤン。卒業前に言われた“さんりんぼう“・・・物事のし始めにエエことせんかったら不具合が続く・・・。“パンツ見せ“のバイトに始まって東京行ってからもキャバ嬢からパパ活まで色々やって金、追いかけた。確かにエエとこ就職したけど寝る間もないサービス残業で結果出すのにアクセクや・・・。 地下鉄に乗ったものの新大阪では降りへんかった。 今夜東京へ戻らんと明日の仕事に障るけど、気づいたら天王寺・・・。コンビニで山ほどビールを買って、歩いていくと突き当たりの塾に明りが灯ってた。 あの日に聴かへんかった忠告をもう一回してもろて、ここで泣くだけ泣いたら、7年振りに・・・懐かしい我が家へ帰ろう・・・。 5a5b9d38-0a1e-4597-b16d-9e8d40e81b46
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