さんりんぼう 2

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さんりんぼう 2

ストーンと背の高いビルが建って、ちょっと周りが小綺麗になってた。7年振りの天王寺。 「ここは変わらずキタナいままやな」 「多香子、多香子やないか?!」 迎えてくれたのは塾長と 「大学へ行ったきりいっぺんも        帰って来んから心配してたんや」 タニヤン先生。 阪堺電車のガタンゴトンが微かに聞こえる路地裏ビルの個人塾。私は東大へ行く前までの数年、ここへ通ってた。 「格好のええスーツ着て、バリバリの  キャリアウーマンやな」 「例えが古いわ」 塾長に誉められて名刺を出した。 「トップクラスの証券会社やで、タニヤン」 「どれ、」 塾長から名刺をとって 「頑張っとるんやな、エラい、エラいぞ!」 タニヤンが何度も頷いてくれた。 頑張ってる・・・そうや、頑張ってきた。高卒の両親が共稼ぎで弟と四人家族。“食べるのがイッパイイッパイ“の生活で必死で勉強してバイトして就職して気づいたら25歳。 急な出張が大阪で、懐かしくなって塾を訪ねてた。 「大倉くんとか深雪はたびたび来てるの?」 「なんや友達とは連絡とってないんか?」 「うん」 東京では違う自分になりたかったから、大阪の同級生とはまるきり疎遠になってた。 「アイツら結婚したんやで」
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