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テストから2週間後。
担任の先生から、脳神経のテストが返ってきたことを伝えられ、返却が始まる。
「野崎さん。」
先生の声に、立ち上がり、テスト用紙を取りに行った。
点数よりも先に、私はテスト用紙をひっくり返す。
『先生の授業が大好きでした。ありがとうございました。』
私が、精一杯の思いを込めて、書いた言葉。
私の、生徒としてできる、精一杯の、先生への告白。
その下に、青くて、綺麗じゃない字で、小さく、控えめに。
『野崎さん
いつも授業を真面目に聴いている姿、見えていま
した。嬉しかったです。満点おめでとう。』
先生。
先生の字だ。
見ててくれた。
気づいててくれた。
ああ。
嬉しい。
嬉しい。
飛び上がりたいくらい嬉しい。
「野崎ー。どうだった? 」
友達が、後から覗き込んできた。
「えっ、満点!? まじで!? 」
「うんっ。」
「はー。大方先生にいいとこ見せたかったんでしょ。」
「まぁそんなとこ? 」
「ほんと好きだねー。」
「ねー。私さ。認定看護師になろうかな。」
「は? 何、急に。」
「脳系の認定看護師みたいな。」
「あるの? 」
「なかったっけ? 脳卒中リハビリ、みたいな。」
「知らん。あんまり興味ない。」
「たぶんあるよ。うん。私、脳卒中リハビリテーションの認定看護師になるわ。」
「まじか。愛の力は偉大だね。」
私は、シワのついた白衣に、恋をした。
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