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感想・意見か‥。
何を書こう。なにか書きたい。
私は解答用紙をひっくり返す。
ふと、友達の言葉が頭をよぎる。
先生が、北病院の脳外科医なこと。
先生が、彼女もいないだろうということ。
先生が、来年にはいなくなってしまうということ。
今日が、先生に会える最後だということ。
好きと伝えたらと、軽く言ってきたこと。
私はシャーペンを再び持つ。
『先生のことが大好きでした。』
書いた。
書いて。
消した。
だめだ。
こんなの伝えられない。
これでもし、先生に引かれたら?
読まれなかったら?
困ったら?
でも。
これで最後だ。
本当に。
伝えたい。
なにか伝えたい。
私は、消しゴムで消すのを辞めた。
もう一度、シャーペンをもって。
1字1字、丁寧に。
最後の丸を書き終えたところで、チャイムが鳴った。
最後の文章に、20分もかけてしまった。
解答用紙を、1番後ろの席の子が回収していく。
どうか、先生に、私の思いが少しでも、伝わりますように。
思いを指先から伝えるように。私は解答用紙を手渡した。
「これで、僕の授業は終わりです。お疲れ様でした。」
最後まで、淡々とした口調だった。
でも、最後の最後に、先生は、少しだけクラス全体を見た。
私は一瞬だけ、先生と目が合った気がした。
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