頸筋に黶ありき

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   俺は、思い出したのだ。  この腕の中の人は俺と血を分けたただ一人の姉で、俺たち姉弟は今まさに罪深い禁忌を犯している真っ只中にあった。  姉の、この不可思議な黶。  頸筋という、最も血が激しく流れる道。  そこに浮かぶ穴に触れ、どうやら俺の意識は血の海を泳いで時を越えたらしい。  姉の示す血の道を辿り、行き着いた先は遠い遠い未来か。  その先にいる俺も、確かに俺だった。  ──生まれ変わったら、まっさらな血と血で結ばれるために──。  その願いを叶えるために、俺たちはこの人気(ひとけ)のない納屋に逃げてきた。
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