2人が本棚に入れています
本棚に追加
姉は俺の背中に手を回しているが、その腕で俺の身に絡み付いたりはしない。
鎌を持っているからだ。
鎌の切っ先を俺の盆の窪にあて、幸せそうに笑う。
俺も、遥か先を見越して笑う。
「ずうっと先で……まっさらに」
そう囁いて、姉は鎌で俺の首を落とした。
振り下ろされる瞬間、姉の手首に巻かれた鈴の激しい音色が耳に響いた。
こうして俺は地獄に堕ち、千年もの間、永き血の海を泳いだ。
あの鈴の音に辿り着くまで──。
【了】
最初のコメントを投稿しよう!