頸筋に黶ありき

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 姉は俺の背中に手を回しているが、その腕で俺の身に絡み付いたりはしない。  鎌を持っているからだ。  鎌の切っ先を俺の盆の窪にあて、幸せそうに笑う。  俺も、遥か先を見越して笑う。 「ずうっと先で……まっさらに」  そう囁いて、姉は鎌で俺の首を落とした。  振り下ろされる瞬間、姉の手首に巻かれた鈴の激しい音色が耳に響いた。  こうして俺は地獄に堕ち、千年もの間、永き血の海を泳いだ。  あの鈴の音に辿り着くまで──。 【了】
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