頸筋に黶ありき

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頸筋に黶ありき

 その女と出会ったのは、運命だった。  ネオンひしめく街を闊歩する、いつもと変わらぬ夜。  雑踏を縫って、鈴の音が聞こえた気がした。  音のする方を見ると、一人の女が立っていた。  女も俺を呆然と見つめている。  さして美人というわけでもないその女に、俺は不思議と惹かれた。  誘われるように、俺はその女に声を掛けていた。  ナンパには違いないのに、そんなものよりはもっと崇高で神聖な取り行いであると、俺はその瞬間から感じていた。  神懸かったような、不思議な感覚だった。
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