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死の太母(マーテル・マカブレス)
太古、“人”は樹上の存在から地上の存在になった。
初めは悲嘆に暮れた “人”であったが、至高四神、そして白と黒の二十の神々の守護の下で次第に数を増やし、繁栄していった。
さらに“人”の心を司どる“人倫の神々”に守護を享け、“人”はますます繁栄し、その数を増やした。
“人”は多くの神々に守られ、幸福と苦悩、清廉と汚濁とを半々に抱えて日々を生きていた。
そこには生、幸福、知恵の喜びがあり、死、不幸、愚昧の苦悩があった。
神々に仕える僧侶と司祭はその調和の尊きを説き、“人”はその調和の状態に満足して生き、満足して死に、大いなる樹の上に帰っていった。
しかし、知恵ある“人”、その知恵ある“人”を導く僧侶と司祭の苦悩は深かった。
“人”は何故争うのだろう?
“人”の世は何故苦悩が満ちているのだろう?
“人”は何故生まれてくるのだろう?
“人”とは何なのだろう?
“人”を導く僧侶と司祭は答えを探し続け、神々に問うた。
だが、神々は“大いなる樹”について語るのみだった。
僧侶と司祭の中で、“人”の世を最も嘆き、苦しんだのは“人”を安息の地へと還す“死の女神”に仕える司祭たちだった。
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