死の太母(マーテル・マカブレス)

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 死すべき“人”は、何故生まれてくるのか?  生まれて来ない事が、“人”にとっては至福なのではないか?  それならば、“人”は地上から一掃されるべきではないか? 永遠に、至福の地に留まるために。    そして、“死の女神”に仕える司祭たちは、一人の聖女の下に動き出した。    大陸の中央、最も深く暗く神聖なる森の中に、聖女ユーデットは“人類の次兄”の一員として生を享けた。  その時から“死の女神”に仕えるべく定められたユーデットは、長じて美麗なる容姿と聡明なる知性を備え、“死の女神”の祭司たちを束ねる地位に就いた。    総ての祭司たちを従えたユーデットは、“人”の世の不幸と苦悩に終焉を齎すべく、祭司たちに命を下した。    最初の司祭は、人々に死の至福と貴きを説いた。  そして無辜の“人”の十分の一が、大いなる樹に還った。  次の司祭は、人々に死の至福と生の苦しみを説いた。  そして無辜の“人”の十分の一が、大いなる樹に還った。    次の司祭は、人々に死の至福と幸福の儚さを説いた。  そして無辜の“人”の十分の一が、大いなる樹に還った。    次の司祭は、人々に死の至福と“人”の世の汚濁を説いた。  そして無辜の“人”の十分の一が、大いなる樹に還った。       
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