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第一話「予告状を出す理由を知っている?」
怪盗がわざわざ予告状を出す理由を知っている?
犯行を有利にするため?
勿論それも一理ある。例えば今。
犯行予告時間を明記すれば、その時間に敵は集中する。その集中した瞬間は弱点でもある。盗まれないようにとする警備の人は緊張し、体が強張り、思考もそこにしか回らない。その動きの鈍さと思考の鈍さを利用すれば、盗みもやりやすくなるわけ。
こんな風にね。
私はその犯行予告時間──二十二時二十二分に(これには特に理由はない。なんとなく2で攻めたかったのだ)文字通りに煙幕を張った。
ぽいっと発煙玉を転がし──発煙と同時に広いお屋敷の一部屋はあっという間に煙でいっぱいになる。
「き、きたぞ! レディクラウンを守れ!」
今回のターゲット『レディクラウン』の今の持ち主さんが大声を張る。
それに呼応して警備の人が気を引きしめているようだった。
……見えないけど。
ともあれ、この時点でこの人達は私がちゃんと盗みにきたと思っているわけだ。
その時点で私の勝ち。
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