第2話 よしおてつの「てつ」について

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「てつは、成仏していないのかしら? 遺骨を動物霊園に預けなくて、自宅に置くようにしているから、怒って出てきちゃったのかしら?」 「わからないよ。でもあの動物霊園は、ひどく管理状態が悪かったでしょう。納骨堂に置かれた骨壺は、全部埃が被っていて汚かった。中には、湿気でカビだらけになっている壺もあったよ。僕はあんな所に、てつの遺骨を預けておけないよ」 「それはそうだけど……」 「それで、てつは、どんな風だったの? 本当に怒っていた?」  妻は「怒っている様子はなかったわ」と答えました。  てつの様子は生きていた頃と同様に、おとなしくて甘えん坊のようでした。  愛猫の穏やかそうな状態に、僕はとりあえず安心しました。 「おそらくてつは、もうしばらくこの家にいたいんだよ。好きなだけいて踏ん切りがついたら、いずれは霊の世界へ帰っていくんじゃないのかな」 「猫の世界にも、四十九日とかあるのかしら?」 「そういうのはわからないけれど。だから今は放っておいて、好きなようにさせておけばいいさ」
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