9人が本棚に入れています
本棚に追加
「てつは、成仏していないのかしら? 遺骨を動物霊園に預けなくて、自宅に置くようにしているから、怒って出てきちゃったのかしら?」
「わからないよ。でもあの動物霊園は、ひどく管理状態が悪かったでしょう。納骨堂に置かれた骨壺は、全部埃が被っていて汚かった。中には、湿気でカビだらけになっている壺もあったよ。僕はあんな所に、てつの遺骨を預けておけないよ」
「それはそうだけど……」
「それで、てつは、どんな風だったの? 本当に怒っていた?」
妻は「怒っている様子はなかったわ」と答えました。
てつの様子は生きていた頃と同様に、おとなしくて甘えん坊のようでした。
愛猫の穏やかそうな状態に、僕はとりあえず安心しました。
「おそらくてつは、もうしばらくこの家にいたいんだよ。好きなだけいて踏ん切りがついたら、いずれは霊の世界へ帰っていくんじゃないのかな」
「猫の世界にも、四十九日とかあるのかしら?」
「そういうのはわからないけれど。だから今は放っておいて、好きなようにさせておけばいいさ」
最初のコメントを投稿しよう!