第2話 よしおてつの「てつ」について

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 妻とそのようなやり取りをしてから後も、月に一度か二度の頻度で、てつは姿を現しました。  飼い主一家は、小さな霊の存在を感じつつもあえて騒がないようにして、自然にやり過ごすように努めました。そして現在……。  てつは、ほぼ毎日姿を現すようになりました。生前同様、猫らしい自由さで、家の中をうろついています。ある時は飼い主の後を追い回し、またある時は布団の上で丸くなって眠り、時折飼い主の足に体をこすり付けてきます。  これは一体どういうことなのだろう、と僕は考えてみました。霊の姿を見ても騒がずに放置しておけば、いずれは消えていく現象だと思っていたのに……。  ひょっとしたら、てつは霊の世界からこちらを覗きつつ、友達の帰りを待っていたのかもしれません。自分が生きていた頃に、大の仲良しだった「よしお」が転生して戻ってくることを知っていて、この場を離れたくなかったのかもしれません。  きっと、彼らはまた一緒に暮らしたかったのです。 
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