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一口しか減っていないカレー。どれだけ距離を縮めようと努力しても結局は、あいつが変わろうとしない限り変わらない。
翔吾が呆れたようにため息をついた。俺と同じ気持ちなんだろう。
次の日、学校から携帯に電話がかかってきた。またか、なんて思うのが嫌になる。今すぐ来いという担任の声に焦りが見えて、今までと違う予感がよぎった。
学校の保健室を訪ねると、担任と養護教諭、そして校長がカーテンの閉まっているベッドの前に立っていた。
クラスの窓から飛び降りようとした、と担任は言った。三者からの謝罪なんてものには聞く耳を持たず、改めて聞き直した。
「死のうとしたってことですか?」
慌てて弟のいるベッドの方へと視線を泳がせる担任に苛ついた。何をどうしたら弟が自殺するような事態になるんだ。
聞いた話は酷く悪質なものだった。弟に自慰行為を強要し、それを撮影したものをクラスの黒板に晒した生徒がいたという。生徒の一人が状況を報告に来て、教室にたどり着いた時には既に弟は窓枠に手を掛けていたという。
一番窓際のベッドへと歩み寄る。白く、清潔感のあるカーテンを掴み、音を立てないよう捲ると、ベッドの中央に膨らみを見つけた。
「勇希」
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