モラル

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態度にも、返事をしないことにも腹が立った。今まで弟に対して乱暴な口を聞いたことはなかったと思うが、もう我慢の限界だった。 「俺もう、お前の事がわからない」 理解しようとしなかった、というのも間違いじゃない。家族であり、兄弟であり、誰より知っていなければならない存在なのに知ろうとしなかった。でももう、何をしても空回って、全てが無意味に思えて仕方がない。 「お前、普通じゃないよ」 言葉で、態度で思いやるのも、この短時間で既に疲れた。 「そんなのあたりまえじゃん」 声を聞いたのが久々すぎて一瞬、誰の声かわからなかった。 「二人は父さんと母さんに育てられただろうけど僕には、父さんも母さんもいない。にいちゃん達に育てられて、普通な訳がない」 ゴツッ、と頬骨に拳がぶつかった音がした。バランスを崩して倒れた身体は、鈍い音を立ててテレビ台にぶつかった。 悶える身体を踏み抑えつけ胸倉を掴み、呼吸をする隙間を与えず殴る。拳はどうやら鼻に当たったらしい。鼻を覆う掌の隙間から粘り気のある赤い液体がどろりと流れてきた。 考えずとも、弟が言った言葉の意味くらいわかった。この十数年、こいつの為にと頑張った事全てが無駄に終わったということだ。ああ馬鹿らしい。     
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