モラル

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明日へ翔ける翼であれ  兄弟が一人増えた。このご時世、中学生で妊娠すれば親と子供でもおかしくはない年齢差の弟。 別に俺は、弟が欲しいとも思ったことはない。でも、父さんと母さんはまた、子供を増やしたくなったんだろうと思った。別にいい。俺の他にももう一人、俺の片割れがいる。世話とか面倒ごとは、俺が何を言うことも無くあいつがやるだろう。なんて気楽に考えていた。  ただ、俺の人生に支障が出なければそれでよかった。   父さんが死んだのが高二の時。いきなり壊れた環境に、まず必要なのは金だとわかってたから、馬鹿真面目に必死になって金を稼いだ。休日も全部シフトを入れて、自分が苦労しないようにしたかった。  日々のストレスで随分前に手を出していた煙草。いつも通り家で吸おうとすると健吾が煩く注意してきた。まだ小さい弟に有害だから、と。そんなの、俺の知った事じゃないと思った。俺は、俺の吸いたい時に煙草を吸う。自分が吸うのを辞めたからといって、それを俺にまで押し付けてくるのはお門違いだ。  何かと弟を理由にして口を出すようになってきた健吾に次第に苛立ってきた。何をするにも、どんなときにも、弟、弟、弟。     
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