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頻繁に遊びに来るようになって、昔のように変わらず接してくれた。勇希の祝い事も祝ってくれたし、一年に数多くある行事にも勇気を喜ばせるものを持ってきてくれた。
それだけでも俺も健吾も大分楽できた。爺ちゃんも、意地を張り続ける健吾を見かねたのか、健吾の下らないプライドに触れないように手助けしてくれた。本人は少ない、と言っていたが、かなりの金額をひっそりと渡してきてくれたこともしばしばあった。同じように健吾にも渡していたようだ。
その爺ちゃんが去年亡くなって、いよいよ誰の助けも借りられなくなった。今年は俺と健吾で行くしかない。
出勤前、勇希が風呂に入っている間にプリントを眺めた。これといって変化のないプログラムだ。でも不思議と、この季節のこのイベントの空気感は嫌いじゃない。自分でも驚くくらい乗り気で、運動会に行く気でいた。勇希も勇希で、運動会を楽しみにしているらしい。練習したダンスをリビングでひっそりと練習してるのを見て初めて、勇希を弟だと実感した気がする。
でもなかなかうまくはいかない。部屋の隅でいつまでも丸めている背中を軽く叩いた。夕方の五時。待ち望んでいた行事はもうとっくにお開きになっているだろう。
「大人も大人で大変なんだぜ」
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