モラル

33/71

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
 小学生に言ったところで理解などできる訳も、別にして欲しいとも思っちゃいない。ただ珍しく、健吾も落ち込んでいた。だからなんとなく、あいつの言い訳を代弁してやろうと思っただけだ。 バイト先の常連や知り合いの飲みに付き合うようになってから、今までとは違う系統の人間とつるむようになった。夜の街で、稼いだ金をつぎ込みストレスを発散する術も教えてもらった。 そのせいでほんのたまに、家に入れるだけの金が手元に残らない事があった。一度それで健吾と殴り合ったが、もうあんな面倒なのは御免だと思った。自分の不幸をここぞとばかりに爆発させ、自分一人が大変なのだと恥ずかしげもなく喚いた。 お前は苦労している。でも、俺も苦労はしている。お前と俺とで圧倒的に違うのは、どうすれば自分を維持できるかを考えたか考えなかったかの差だ。 自分が犠牲になればいい。そしてそれに誰かが気が付いて労ってくれればそれで報われる。そんな甘い考えでいるから自爆する。 自分を保てない奴に、人を思いやるなんて出来ないんだよ。 うんざりしていた。必死こいて金貯めた金の使い道に口出しされるのも、人に自分の人生のリズムを崩されるのも。     
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加