モラル

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それをよく行くバーのマスターに愚痴った。年齢を偽っていたのは少々問題あるが、そのお陰でホストクラブのバイトを勧めて貰えた。ホストクラブなら、自分の娯楽と金を稼ぐという両方の願いを叶えられる。そう言われてしまえば断る理由なんてなくて、迷いなく話を受けた。  ホストクラブのバイトは想像以上に良いことづくめだった。職場での飲酒OKになってから仕事という建前で客の話し相手をすれば酒が飲めるし、若さとノリの良さでランクは好調にアップし給料も良い。 そして何より、弟の面倒を見る事を最小限に抑える事が出来る。これだけでもかなり違う。何が悲しくて若者を謳歌できる年齢で子供の世話をしなきゃならない。 そんなことを言えば健吾も俺と同じ年齢。俺みたいに考えた事もあると思う。でも、そんなのは自分でどうにかすればいい。双子の片割れが俺みたいなやつで可哀相だとは思う。それでも前の職場よりは収入がいい。その分家にも安定して金を入れられるようになった。健吾も、何も言えやしないだろう。結局そういうもんだ。兄弟なんて。  深夜のバイトを始めてから生活が逆転するようになった。加えて平日の昼間は大学。流石にしんどくて、休日は帰宅してから夜までぶっ通しで寝るなんて当たり前になった。 元々頭は悪い方じゃない。教科書さえ読めば大抵のテストやなんかはクリアできる分、勉強なんてする時間も気力も無駄に思えて授業中は睡眠に使った。     
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