モラル

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「…あ」 「なんだよ」 「今、女の人が」 「…ッチ、マジかよ。あの野郎」 最近健吾が女を連れ込んでる。つい最近まで堅物だったのが嘘のようなクズぶりだ。 俺に対する嫌がらせか。人の休日を丸無視したタイミングでの連れ込みも、通報の対象になる弟を夜に追い出すのも、今までの反動が来ているように自分の事しか考えていない。  公園の適当なベンチに腰を掛け、隣に座る勇希に鮭握りとお茶と、気まぐれに買った肉まんを渡す。  最近ずっと、こんな感じの食生活なのだと思う。近頃は夕方から出かけそのまま職場へ行くことが続いていた。単に健吾の顔を見たくないからだ。そのせいで勇希の食事をしている姿も見ていない。 特に気にかけている訳じゃないが、冷蔵庫の焼きそばの賞味期限が切れていた。勇希に作ってやることも、勇希に料理を教えるも放棄しているんだろう。  腹は減っているらしい。少し考え事をしている間に鮭握りを食べ終え肉まんを食べ始めた。俺も、帰り道のショップで買ったハンバーガーを口に含んだ。給料ぎりぎりじゃなきゃ、今頃街で酒を飲んでいたのに、何してんだ、俺は。     
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