モラル

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爺さんは相変わらず察しがいい。「ただ、勇希くんと遊びたいだけだ。おもちゃを買うのは許して欲しいが、子育ての邪魔にならないようにするから」と言ってくれた。 それからは頻繁に、弟を爺さんの所へ預けるようになった。それは実際、とても助かった。面接に力を入れ、就職活動に集中できた。弟も弟で、爺さんを本当の祖父だと思い込んでいるようだ。でも今は、そのままでいいと思った。 隣町のスーパーの事務職に就職が決まった。就業時間を守り、残業を減らすように就業体制を見直しているというしっかりとした職場らしく、決まって良かったと思ってる。安定した時間が確保できれば、弟の世話も今までよりもしやすくなるだろう。 週休二日制も上手く使って、いろんな所に連れて行ってやりたいと思っていた。父さんと母さんが、幼い頃にそうしてくれたように。 弟に物心がつき始めた。弟の成長は喜ばしい事。でも、正直な感想としては、自我を持ち始めた人間はこうも赤ん坊の頃と違い手がかかるのか、という事。 日に日に大きくなっていく弟に気持ち的な焦りがでたのも原因の一つだけれど、自分たちの意思と関係のない動きをする弟に少しずつ苛立ちを感じるようになった。     
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